FAIRR:抗微生物薬耐性:機関投資家が対策を取るべき理由とその方法


AMRとは何でしょうか

抗微生物薬耐性(AMR)はバクテリアやウィルス、真菌、寄生生物が時間と共に進化する際に起こり、その結果治療薬に反応しなくなり、感染の治療が困難となって病気の広がりや重篤な病気、死亡リスクが増加します。


AMRが財政面および医療に及ぼす膨大なコスト

世界では毎年70万人が抗生物質耐性菌が原因で死亡しており、その数は2030年までには年間 1,000万人にのぼると予測されています。 AMRは医療費だけでなく世界の経済および財政状態をも脅かし、GDPの削減および経済状況の悪化により2,400万人が失職し貧困に陥り、 世界銀行はこれによる世界経済への影響が2050年までに100兆米ドルに達すると推定しています。


日本国内では抗生物質耐性菌により年間8,000人が亡くなっていると推定されています。 更に、HGPIが2021年に発表したレポートでは、日本の高齢者が人口を占める割合が大きいことから弱者や治療薬に頼る人口が増加し、AMRによる脅威が特に高くなると報告されています。


これらの結果、AMRは急速にグローバルな政治的課題へとなりつつあります。今夏開催されたG7において各国の財務大臣は、AMRの問題に取り組み、この課題を「silent pandemic(サイレント・パンデミック)」と呼び、将来世代の医療および経済の繁栄を保証するために全力を尽くすことを明言しました。また厚生相や業界と協力し、新規抗菌剤の開発において民間および公共部門の力を活用していく約束をしました。15か月後にG7の開催 を控えた日本においても、AMRのリスクは政治面、財務面および医療面における大きな課題になると思われます。


畜産が果たす役割

世界で使用されている抗菌剤のうちその70%を畜産業でのが占めており、食品生産に使用する動物数の増加、農耕技術の変更、および集約農業技術への移行により、その使用率は2010年から2030年の間に67%という劇的な上昇を見せると予想されています。

抗菌剤はまた、病気の動物の治療よりも成長促進のために頻繁に使用されており、アジアでは抗菌剤使用の40%が成長促進目的となっています。

畜産において抗菌剤を適正に使用することは、AMRによるリスク緩和にとって大変重要です。日本のすべてのタンパク質製品は企業による抗菌剤使用または抗菌剤に関する政策が開示されておらず、Coller FAIRR Protein Producer Indexにて抗菌剤のリスク因子の「高リスク」にランク付けされています。


「One Health」アプローチ―期待できるソリューション

AMRは国や種によって差別されることはなく、世界中に脅威をもたらします。そのため世界各地が協調的に対応する必要があるのです。WHOは、AMRへの対応としてプログラムやポリシー、規制、リサーチを設計および採用し、複数の部門が公衆衛生の向上に向けてコミュニケーションを取り、協力しあう 「One Health」のアプローチを奨励しています。

AMR臨床リファレンスセンター(AMRCRC)は日本における「One Health」アプローチの一例であり、薬剤耐性(AMR)対策アクションプラン採用のために設立されました。その戦略は3つに分かれ、それぞれが「One Health」アプローチへの役割を持っています。

機関投資家もまた重要な役割を担っています。Investor Action on AMRの取り組みにはすべての投資家が参加でき、この「サイレントパンデミック」に対応するための知識やアクションを共有することができます。UN PRI(国連責任投資原則)、Access to Medicine Foundation、および英国保健省とのコラボレーションの共同設立者であり、運用資産総額12兆を誇るグローバル連合であるFAIRRは、三井住友トラスト・アセットマネジメントなどの機関投資家を抱え、地域またはグローバルレベルで抗菌薬耐性の問題に取り組んでいます。

日本の民間企業もまたAMRへの対応のために参加しており、20社のバイオ医薬品企業が10億米ドルを投資してAMRアクションファンドを立ち上げ、2030年までに2~4種の新規抗菌剤の発売を目指しています。


機関投資家は何ができるのでしょうか

世界に真の影響を与えるために投資家ができることの1つは、抗菌剤の責任ある使用を奨励するために企業と協力し、投資家の発言をサポートすることです。

近年発表されたFAIRRの報告書では、AMRの拡大に対して動物用医薬品会社が果たす役割について探求しており、さらにすぐれた管理を目指して投資家が何ができるかについての見識を提供しています。サプライチェーン全体にてこれらの企業およびその管理活動を評価する明確なフレームワークを策定することは、機関投資家が自社のポートフォリオ会社によるAMRへの貢献を理解し、それらの企業の製造、生産、販売、マーケティング、R&DにおけるAMR管理や当業界の規制への理解向上に協力するために大変重要です。


世界に与える実影響

この問題に関わる機関投資家の力、および影響を与えて変化を促進する能力を過小評価することはできません。グローバルに展開するレストラン ヤム・ブランズ、RBIおよびマクドナルドなどは、運用資産55兆米ドルのグローバル投資家エンゲージメントへの対応として、自社のサプライチェーンを対象とした抗菌剤に関するポリシーを打ち出し公表しました。 長期におよぶこのエンゲージメントの着手時にポリシーを確立していたのは署名企業20社のうちわずか1社だけでしたが、エンゲージメントの終結時までに行われた各協議の結果、すべての企業がポリシーを作成、または作成に着手しました。

機関投資家が一体となることで、ESGにまつわるこれらの重大なリスクに対処し、公共の健康を守り、長期に渡るバリューを生み出すためにさらに多くを達成することができます。この「サイレントパンデミック」による影響を食い止めるためには、いま行動を起こさなければならないのです。


本記事はRIとFAIRR Initiativeのパートナーシップ記事です。 FAIRR Initiativeについてはこちらをご覧ください。

3回の閲覧0件のコメント